ベルリンのペルガモン博物館で、楔形文字の研究に没頭する学者アルマ。研究資金を稼ぐため、とある企業が極秘で行う特別な実験に参加することに。そこに現れたのは紺碧の瞳でアルマを熱く見つめるハンサムなトム。初対面にもかかわらず、積極的に口説いてくる彼は、全ドイツ人女性の恋愛データを学習し、アルマの性格とニーズに完璧に応えられるようプログラムされた高性能AIアンドロイドだったのだ!トムに課されたミッションは、“アルマを幸せにすること” ただひとつ。実験期間は3週間。献身的でロマンチックなトムのアルゴリズムは、過去の傷から恋愛を遠ざけてきたアルマの心を変えることが出来るのか――?
難攻不落のアルマに恋を仕掛けるアンドロイドを演じるのは、二枚目俳優のダン・スティーヴンス。英国訛りのドイツ語を駆使し、完全無欠の人工知能を茶目っ気たっぷりに演じる。素直になれないアルマを繊細に演じたのは演技派女優マレン・エッゲルト。ベルリン国際映画祭で史上初の性別を問わない<最優秀主演俳優賞(銀熊賞)>を受賞した。2人の実証実験を見守る<ワケあり>相談員には、『ありがとう、ト二・エルドマン』(16)のザンドラ・ヒュラー。監督は、Netfixドラマ『アンオーソドックス』でエミー賞を受賞し、世界的な注目を集めるマリア・シュラーダー。本作は早くも2022年度アカデミー賞国際長編映画賞ドイツ代表に選出された。
果たして、人間アルマとアンドロイドのトムが行き着く未来とは――? 理想のパートナーを探し求めるあなたに贈る、クスっと笑えてほんのりビターな傑作ラブロマンス!
本作に関しては、物語の壮大なテーマに負けないくらい軽くて遊び心のあるトーンを追求しました。未来を舞台にすることも考えましたが、そうしない決断をしました。既にアルゴリズムに支配され、導かれている今日において、トムのように高度に発達したロボットのコンセプトは、たとえ彼のような姿をしていること自体は遠い夢のようであっても、とうに存在しています。
そのため、この映画はお馴染みのベルリンが舞台になっています。アルマは現代の女性です。唯一、未来の前兆として登場するのが、テラレカ社とその独特な従業員と商品で、トムは彼らのプロトタイプです。この設定が、アルマへの感情移入を可能にしてくれます。彼女は我々よりも先を生きているわけではないし、我々以上に未来について知っているわけでもありません。トムとの出会いは、我々だけでなく、彼女にとっても新しく異質な体験です。このような設定にすることで、コメディ要素を織り込むことができました。
マレン・エッゲルトは、常に自然体で演技をする女優で、順応性もあり、変更にも柔軟です。そんな彼女はアルマの人間性を最高な形で引き出してくれました。彼女を通したからこそ、アルマは賢く無力、面白く厳格、不安定で規律正しい、無頓着で識別力がある、そんな人間になりました。複雑で、愛らしく、愛情深く、美しく、不完全な人間に。
彼女と同じく、ダン・スティーヴンスもこの映画にとっては天の恵みでした。トムの複雑なセリフに絶望しないレベルのドイツ語を話すことができ、機械のように正確、自分では気が付いていないけれどハンサム、そしてトムがロボットであることを忘れさせないけれどそれでも好きになってしまうくらい演技のうまい、そんな俳優を我々はずっと国外で探していました。ダンがこの役を受けてくれたこと、これ以上の喜びはありません。
撮影監督のベネディクト・ノイエンフェルス、美術のコーラ・プラッツ、そして衣装のアネット・ガザーと一緒に、特に衣装やアルマの部屋において、時代を感じさせない演出を追求しました。最初のリハーサルで、対話のスピード感と役者たちの熱意を目の当たりにし、キャサリン・ヘプバーンやジェームズ・スチュワート、そしてケイリー・グラントの映画を思い出しました。古典的なカメラワークとエレガントなシンプルさが最適な演出であることにすぐ気が付きました。アルマの部屋に関しては、美しい景色、都市のロマンチックさが伺えるのと同時に、上品すぎず、少し混沌とした状態がいいと我々は思いました。大聖堂の向かいにある工業的な共同住宅街区が理想的でした。そして、そのようなアパートをスタジオに再現できたことも、この映画製作においては大きな恵みでした。結果として、カメラワーク、セットデザイン、衣装デザイン、メイクアップデザインを通して素晴らしい色彩、照明、空間を実現することができました。
ラストシーンを迎えるまで、
この作品がどれほど心に響くものなのか
気づかないかもしれないほど、穏やかな方法で笑わせてくれる。
Time Magazine
ポエティックな展開であり、
また美味しく笑えるコメディ。
ほぼ完ぺきな作品だ。
Wall Street Journal
この珍しくて優しい小さな映画は、
時折シュールな雰囲気を醸しながら、
デジタルと生物学的な配線の間の溝を慎重に問いかける。
New York Times
ダン・スティーヴンスが魅せた、イギリス訛りのドイツ語の優雅さと、
ウィットに富んだオートマトンの進化を描いた作品がこれまであっただろうか?
New Yorker
機械仕掛けの主人公のように、この魅力的で優しい映画は
あなたの心を掴むためにスマートに設計されている。
Empire Magazine
『ダウントン・アビー』以降、ダン・スティーヴンスの最高の演技!
それもほとんどドイツ語で。
Daily Telegrafh
笑いと同時に成熟した深みがある
Deadline
最近の映画の中で最も感動的な作品のひとつ
Critic’s notebook